オープンソース開発の終焉

人気WebブラウザFirefoxの開発に暗雲が立ちこめているようです。

確かに私も今ではSafariとChromeを使い分けていて、FirefoxはWebの表示で気になる点があったときぐらいしか起動しません。 湯川さんは

それにしてもオープンソースって新しい時代の究極のビジネスモデルとして期待されていたのに、どうして機能しなくなったんだろう。ちょっと考えてみたい。

と問いかけていますが、確かにそうでしたね。

でも私は前々からオープンソースには懐疑的でした。「そりゃ、お金持ちの道楽には良いだろうけど…」と。小飼弾さんのように、若くして大きな富を築いただけでなく、ひとたび書評を書けばまとまった額のアフィリエイト益が発生するような成功者がオープンソースに時間と能力を割くのは素晴らしいと思いますが、有志の大多数はそのような立場にはないのでしょうから。

例えばOpenOffice。あの使いにくさてんこ盛りのMicrosoft Officeがデファクトスタンダードになり、定期的にアップグレード費を払わされるのは釈然としないので代替品を用意しようという心意気は買います。でも、オープンソースの有志によって開発されるということは、営利企業が売り上げを見込んで開発するときほどのモチベーションや切迫感、統制が伴わないのではないかと。お金をかけないのでGUIのデザインにしてもチープになりがちだし。結局、OpenOfficeはMicrosoft Officeに取って代わることもなく、オラクルによるサン・マイクロシズテムズの買収などもあって、よく解んない状態に追いやられました。

で、思うのですよね。「その開発力、互換品ではなく、もっとオリジナリティ溢れる製品作りに向けられたらいいのに」と。

そこで考えたのですが、企業が営利目的で開発案件を掲げ、仕様とソースコードを公開してボランティアの開発協力者を募って製品を作り上げるなんてことができれば理想かな。功労者には完成品のライセンス供与やクレジットに名前を入れて報いることにして。アイディア勝負のゲームやスマホ向けアプリには無理でも、業務用のクリエイティブツールの類いなら、そういう公然とした手法も成り立つのではないかと。

もはやパソコン用のソフトウエア製品が売れない時代ですが、例えば「肥大化しきったIllustratorのライバルになり得るドロー系ツール」や「Wordよりも素直に使えてInDesingほどの専門スキルは必要としない文書作成/レイアウトソフト」なんてものには見込みがあると思うのですがね。Microsoftにはcloudという外圧があって以前ほど横暴なことはできなくなりましたが、プロ御用達のツールを一手に引き受けるAdobeは、Creative Suiteのアップグレードポリシー変更などで以前よりも強引になった感がありますし。

そうそう思い出しました。私は以前IT関連機器の取扱説明書を制作する会社に勤めていたのですが、制作の現場では決してトリセツ制作の用途に適しているとは言い難いQuark XPressやAdobe InDesignが使われていて不効率に思えたので「いっそトリセツ専用ワープロを開発してはどうか?」と提案したことがありました。例えば「語句の統一支援」「新旧差分チェック」「相互リンクの追跡更新(InDesignにもBuggyなのが搭載されているけど…)」といったトリセツ作りで多大なマンパワーを要する作業を肩代わりしてくれる機能があれば、どれだけ制作効率が上がり、コストダウンに繋がったか…。最終的には予算措置ができずにその企画は流れたのですが、そのような開発案件には「外部のボランティアを動員する製品開発」は有効な手段かもしれません。