五輪後に東京圏は急速に劣化し始めるという予測があります。その頃には団塊の世代が70歳を越えてあらかたリタイヤしているから。さらに5年後10年後となると彼ら彼女らは後期高齢者です。中には生涯現役でバリバリ稼ぎ続ける経営者もいるだろうけど、ほんの僅か。ボリュームが最大の世代が所得税を払わなくなる上、次第に高齢者向けサービスを受ける側になっていくインパクトは大。長年地方から労働力をかき集めて繁栄してきた副作用ですね。地方よりもその割合と絶対数が圧倒的に多いという。
でも、これほどの問題をメディアは大して取り上げていません。黙殺しているのか、あるいは別の何かで乗り切れると楽観視しているのか。例えば五輪特需で?無理でしょう。人口構成が原因なので。
お年寄りの排除なんてできないし、病気をしてくれるなというのも無理な話。高齢化を緩和できるほど膨大な数の移民・難民を受け入れて戦力化する包容力もありません。よって都市の高齢化の波は確実に到来します。ならば5年先、10年先の東京圏がどうなるか心の準備をしておくべきかと。
もっとも、劣化するといっても東京は日本の政治経済の中心地であり続けるはず。大半の企業も官公庁もそのままだろうし、労働者も通勤圏内に住み続けることになるから人口規模は維持されます。
ただし、高齢者の割合増加を受けて現役世代への負担は増えます。例えば東京では持ち家率が低いく、十分な貯蓄も作れなかった人も多いので、それら持たざるリタイヤ世代のために公営住宅をたっぷり設ける必要がありましょう。当然、原資は税金です。
また、この先はさすがに地方からの人口流入ペースも落ちるので、住宅の余剰感が顕著になります。なにしろ東京圏ではデヴェロッパー任せで無制限にマンションが建てられてきたから。自治体が下流良人向けに必要分を借り受けたとしても、まだ余ります。都心や有力地の物件はともかく、郊外のベッドタウンや古いマンションなんかは放置すればまばらにスラム化していくので、治安とインフラの維持のためにこれまたコストが増大します。
それらに対する負担名目が住民税になるのか健康保険料になるのか、はたまた別の税項目が作られるのか。ともかく東京圏在住者の負担額は大幅に増えていくはずです。
加えて高齢者の割合増加で消費活動は鈍り、街の活気はいくぶん失われます。東京圏に労働力を吸い上げられた地方がこれまで経験してきたことですね。違うところは地方が高齢化のピークを越えているのに対し、東京圏ではこれから急激に進行するという点。落差は大きいだろうな…。
まあ逆に考えれば、老人の多さに慣れ、生活コストの増加を受け入れさえすれば東京圏での都会的な生活も続けられます。腐っても鯛。相変わらず羽田・成田の二大国際空港があり、新幹線やリニアの起点で鉄道も網羅されており、働き場所も各種エンターテイメントも集結しているのだから、そこに魅力を感じ続ける人も多いでしょう。東京が劣化したところで地方都市が取って代わるわけじゃなし。
それに「便利だけどハイコストな東京圏」と「不便だけどローコストな地方」という構図が鮮明になっていくのは、まっとうな着地点です。どちらを好むかは人それぞれですが。
ちなみに私は後者。自動運転車が実用化されるであろう15年後ぐらいを目処に九州に帰るのが良いかなと思ってます。