佐賀県は都道府県魅力度ランキングで常に最下位を争います。それを知る県民も「佐賀には何もなかよ」と言います。これは主に観光客を多く呼べるような有名な観光資源に乏しいからでしょう。なにしろ人口が少ないので、リピーター獲得が前提の大規模エンタメ施設の類は到底実現不可能です。
でも私はそんな佐賀が気に入っています。「何もない」こそが魅力だろうと。
例えば風景。佐賀駅周辺の市街地を抜けるとこんな感じの田園風景が広がっています。晴天下、自転車で走ると実に清々しいのですよね。
知らない人は多いかもしれないけど江戸時代の佐賀は今とは逆の雄藩でした。明治維新の立役者である薩長土肥(肥前が佐賀)に名を連ねるくらいだし。ちなみに当時の福岡は借金まみれでしたよね。
佐賀が豊かだったのは出島を擁する長崎(幕府直轄地)のマネジメントを担っていて西洋文明に明るかったのと、佐賀平野の穀倉地帯があったからでしょう。かつては米が富の尺度だったように、近代化が進む前は食糧生産こそが存続における最大課題だったわけだから。
そして佐賀県の食料自給率は今でも100%前後。農業が盛んな上、県の南北両側に海があって海産物も豊かだし、佐賀牛のような酪農ブランドもあります。みかんに至ってははまさきなんて特級品も生まれました。
しかも福岡の隣という地の利の良さです。鳥栖市などは福岡の地方の市よりも博多までのアクセスが良かったりします。
で、何が言いたいかというと佐賀のポテンシャルは実は高いということ。とりわけ対エネルギー危機において。
もしロシアによるウクライナ戦争が長引き、石油や天然ガスの国際的な取り合いでガソリン価格が高騰し続けようものなら、多くの食料品の地産地消が可能な佐賀は一躍有利になります。逆に最も不利なのが、あらゆる物資を外部からの供給に頼っている東京です。
また、近年は長距離ドライバー不足も言われています。だったらエネルギー危機が来なくとも、やはり長距離輸送に頼る東京は不利です。「不動産の価格こそ圧倒的に高いものの食料品などはさほどでもない」という東京の姿は変わっていかざるを得ないでしょう。
食料自給率でいけば北海道や東北も高いけど冬が寒くて暖房費がかかりますよね。
もちろん佐賀が大きく発展する可能性は乏しいけど、将来「食料品が相変わらず安くて、実は暮らしやすい」と言われるようになる可能性はあるでしょう。