キャノンのドキュメントスキャナの新製品

実は私もドキュメントスキャナを買いたいと思っているものの、良い製品がないのでお預けになっていたのですが、先週キャノンから新しいドキュメントスキャナimageFORMULA DR-C125が登場しました。

キャノンのドキュメントスキャナ

私がドキュメントスキャナで重要視するのは、

  • 給紙スタッカに50枚ぐらい挿せること
  • 複数枚給紙したときやジャムった時の対処が簡単であること
  • 余計なアプリの添付で販売価格が上がってなさそうなこと

公開されているスペック表にはスタッカの給紙能力は書かれていないようなのですが()、どうなのでしょうかね。

ちなみにベストセラー機のScanSnapはスペック的には申し分ないものの、発売されて久しいのとAcrobat同梱(私は持っているので要らない)で割高感がある点がネック。Acrobat別売で少しスペックが上がった新モデルを出してくれると良いのですが。

DR-C125の予想価格は45,000円ぐらいとのこと。ちと高いので、もうしばらく様子見してみましょうかね。


Canon imageFORMULA DR-C125
A4対応 CISセンサー 給紙枚数30枚
重送軽減リタードローラー採用
Uターン排紙省スペース設計モデル

※ と書いてからAmazonの広告(↑)を貼ってみたら30枚と書いてありました。ちょっと物足りないなぁ。

ePubが枝分かれ。Appleの試みは謀反か?

AppleがiBooks 1.2で絶対レイアウトのePubをサポートしたのだそうで。ある仕様のファイルをePub内に追加しておくと1,200 x 1,700ピクセルの仮想ページ上でcssによる要素の絶対位置指定が有効になるのだそうな。

とは言え、そもそもePubは「どんなデバイスでも表示できるようレイアウトを固定しない」が基本コンセプトのはず。ページサイズの固定やら絶対位置指定を許したらそれはもうePubではないような…。

でも個人的には歓迎します。それもありだろうと。「使えない標準規格」より「使える独自規格」の方がよほどあり難いと思うので。まあ、ePubは文芸書に限れば使える部類でしょうが。

世の中(特にIT業界)には標準規格好きの人がいますよね。やれ「自社が開発を止めても、半永久的にドキュメントが読める」などと言って。解らなくもないですが本末転倒だろうと。後世に残せるかどうかを気にする前に、後世に残すべき作品を送り出さないことには始まりません。標準規格準拠でも駄作なら見向きもされず、逆に魅力的な作品なら独自の作り込みであっても人々は何とかしようとするわけです。もちろん魅力的な作品が標準規格準拠なら言うことなしですが、えてして斬新なコンテンツを世に送り出す際は、既製の枠組みを無視せざるを得ないかったりします。他人と違うことをするチャレンジャーが新たな潮流を作り出すわけです。

実際のところAppleの市場支配力と浸透力によってiBooksの固定レイアウトコンテンツを定着させてしまえば、それが当たり前になってしまうと思うのですよね。

それに、今なら固定レイアウトの電子書籍はPDFが最有力ですが、PDFは仕様が複雑かつ冗長で動作が重かったり、DRM面が不十分だったりとデメリットも目立ちます。確かに便利ですが多くを追い求めすぎだろうと。でももし固定レイアウトによるePubが市民権を得れば、電子書籍用途では少なからず代替されるかもしれません。そうして新たなツール/サービス市場と仕事が生まれるわけです。

もっとも、デバイスによって搭載するフォントが違うので、PDFのように普遍的に同一な表示結果とはならないはずですが、もしWebKitに標準的なフォントがバンドルされるようになれば…。

てなわけで私はAppleの試みに賛成です。ぜひ文芸書向けスタンダードePubに並び立つ規格に育て上げ、iBooks以外のePubビューワーでも意図した通りに表示されるように持っていって欲しいと思います。

なるほどePubが目指すところは…

海上忍氏の『来るべき「EPUB 3.0」を整理する(1)』を読んで、ようやく解った気がします。ePubがどこを目指しているのかが。簡単に言うと「DRMがかけられるWebパッケージ」なのでしょう。

よく知られているようにePubの中身はWebみたいなもの。そしてWebは良くも悪くもモノの価格を失わせました。そして最も顕著なのが情報、次にコンテンツ類。「もはや情報なんかタダで当然」と言わんばかりに無償提供か安価での提供を強いられてしまっています。コンテンツ類も非合法なものまでが氾濫してしまっています。

ならば、Webページをひと塊にして鍵をかけて、お金を払った人にだけが開けられるような鍵をを掛けて売ろうと考えるのも当然。いや、海上氏の記事にはDRMの話は出てきませんが、ePub規格の背景にはきっとそんな思惑が働いているんじゃないかと思います。

で、私の個人的な予想はこうです。

確かにePubはデファクトスタンダードとして広く普及する。
けれども玉石混交、無軌道に枝分かれして次第に収集がつかなくなる。
Webがそうだったように。

ePub日本語拡張仕様策定が事業仕分けを食らった件

11/16、新ICT利活用サービス創出支援事業が事業仕分けで予算計上見送りの判定を食らいました。ePub日本語拡張仕様策定なども水を差されたわけですが、まあ当然でしょうね。私もUstreamを見ていましたが予算要求する側の説得力が乏しかったので。もっとも事業仕分けには法的拘束力がないので実際に予算が付かないかは解らないのですが。

要求側の主張はこんな感じだったかと。

  1. 国が予算を付けなければ標準化は行われなず、日本で電子書籍のビジネスがシュリンクする
  2. 企業ごとにフォーマットが異なればコンテンツの囲い込みが進んで国民にとって迷惑
  3. 放っておけば3グループに分裂する状況

それって何なんだか。1や3は単に出版業界の足並みの悪さを嘆いているだけですし、2に関して言えば、もう既にたくさんの書籍がiOSアプリとして登場しています。もちろん既刊本、新刊本の総数からすれば僅かですが、少なくともePubの日本語拡張仕様を待たなければ出版ができないといった状況ではなく、iOSアプリは他の機器では動かないので事実上の囲い込みもとっくに発生しちゃっているわけです。

百歩譲って策定した日本語拡張仕様が早急にePub規格に採用されたとしても、果たしてiPadで先頭を行くAppleがiBooksにそれを実装してくれるかは不明です。というか多分やらないと思います。なぜなら10年くらい前までの「Appleにとって日本は米国(英語圏)の次に重要な市場」だった頃とは大きく事情が変わってきていますので。頼みの中国語もとっくに横書きに切り替わっていますし、いまさらAppleが日本ローカルの事情を優先的に汲み上げるようなことはしないだろうと。GoogleやAmazonもそう。なにしろ日本の産業界は彼らを「黒船」と称して半ば敵視している感もありますし。

まあ、日本語拡張仕様対応のePubビューワは国内メーカーが各デバイス向けに開発するにしても、そもそも「ビューワの都合で改ページ、リフローされてはかなわん」という作家もいるはずです。物理サイズが固定される紙の本ならカッチリとした禁則が利いていたものが、ePubではデバイスの表示サイズに合わせてリフローされる結果、往々にして「適当な禁則」に成り下がってしまいがちです。一行あたりの文字数が少なすぎたり、変な区切りで次ページに泣き別れたり…。これに耐えられない作家は少なからずおられるはすで、やはりPDFかアプリとしての配布を望むでしょう。

穿った見方をするなら、ePub日本語拡張仕様、フォーマットの標準化うんぬんは、国内の著名な作家の方々に対して「もうすぐ状況が整うから、どうか海外の電子出版会社と組むようなことはせずに待ってくれ」という、国内出版業界の後ろ向きな防衛戦術のような話なんじゃないかとも思えてなりません。

ともかく、ePub日本語拡張仕様策定の方は今年度の予算でいいところまで行っているとも聞きますので、私も仕分け人と同意見でわざわざ予算をつけて国が関与すべき話ではないと考えます。それにIT系ビジネスの世界では先に主導権を握った者が往々にして勝つわけで、うだうだやっていれば周回遅れになるだけです。ここで勝負をかけたい企業は、そんなことに惑わされずに、自身が最も妥当と考える方式でもって、さっさと実績を作りにかかった方が得策でしょうに。

◆◆◆

追記。

このエントリを書いた後に「どうやらAppleはWebKItに日本語拡張仕様を盛り込もうと頑張っているらしい」という噂を聞きました。

現状でもSafariはルビに対応しています。ただし行間隔が無残に開いてしまいますが…。

もちろん真偽の程はわかりませんし、それが本当でも途中でキャンセルにならないとも限らないでしょう。でも、これをやられるとまたAppleやGoogleに美味しいところを取られ、主導権を握られてしまいます。ローカル言語による一種の参入障壁があっさり乗り越えられて、国内メーカーは後追いせざるを得なくなるような…。ならば来年度の活動なんてのは無意味なわけですから、やはり仕分けられて当然です。仕様が決まればさっさと実装して市場で展開した者が勝ちなんだから。

やっぱ電子書籍ってダメなんじゃね?

私は会社の業務で電子書籍ビジネスを興味深く見守っているのですが、どうにも成功への道筋が見えてきません。中にはヒット作品も出るのでしょうが、電子書籍時代といえるものが本当に到来するかというと…。

例えば紙の本の世界では、近年のベストセラー書籍として村上春樹さんの『1Q84』が挙げられます。昨年5月の発売から僅か2ヶ月で発行部数200万部を超えたメガヒット作品ですが、ちょっと思うところが。2巻で200万部超なら購入者数はざっくり100万人。凄い数ですが、日本の総人口1億2,700万からすると1%弱。つまり品薄感も薄れてきたあの時点で99%以上の日本人は大人気作品を購入していなかったことになります。この割合は第3巻が加わった現在でもあまり変わっていないはずです。

もっとも実際には家族や友人、あるいは図書館から借りて読んだ人やBOOKOFFなどで中古品を買い求めた人も大勢いるはずなので読者の総数はもっと多くなりますが、それでも新品を購入した人は国民の1%程度。逆に言うと「超ベストセラー作品ですら、対象となる人口の1%にしか買わせる力がない」ということになりましょう。

他の例としては、確か『ハリー・ポッターと賢者の石(シリーズ第一巻)』が発行部数で500万部を超えていました。小中学生の必読書的なポジションになれば人口の5%くらいまでにはアプローチできる計算です。

もちろん中には村上春樹作品もファンタジー作品も読まないけど、日ごろから本を買うことに抵抗のない熱心な読書家という人もいるでしょうから正確な数字にはなり得ないのですが、これらの例を踏まえて言えるのは「実際にお金を払って本を買う人の割合は、全人口の内のせいぜい数%程度」ということではないでしょうか。そもそも本が次第に売れなくなってきたから出版不況と言われるのでしょうし。

これを電子書籍に当てはめてみます。仮にiPadが100万台売れているとして、1Q84クラスの本でも潜在的な購買層の割合が1%なら最大数売れても1万部。当然、他の本だと数千部、数百部といった規模に下がるはずです。

iPadの他にもいわゆる電子書籍端末は続々と登場してきます。データフォーマットを汎用性の高いePubにすればiPhoneやその他のスマートフォン、それにPCも電子書籍リーダーとしてカウントできるので母数はさらに大きくなりますが、人々はそれらを必ずしも書籍用として買っているわけではないので当てにはできません。

その上、紙の本との食い合いも起こります。なにしろ本一冊はiPadよりも圧倒的に安く、貸し借りやBOOKOFFなどに買い取ってもらうことも容易ですが、電子書籍では難しいものがあるので相変わらず紙の本の需要は根強いとも考えられます。

だとすると、もし電子書籍の品揃えが充実してきたとしても、それこそ紙の本の発行を中止にでもしない限り、いつまでたっても電子書籍からは十分と思えるだけの収益が上がるようにはならないのではないかと。現段階でそこそこ売ろうと思えば、SNS的なサービスとからめてコミュニティとして守り立てるといったことが必要になりそうです。またコストが嵩んでしまいますし、本を読んで楽しんでもらうというよりも、仲間内で盛り上がるためのネタの提供みたいな位置づけになってしまいます。それは悪いことではないでしょうけど。

いや、出版社各社が次第に体力をすり減らせていけば、どこかで電子書籍オンリーに切り替え、そちらの方が都合がいいということも起こり得るかも知れませんが。

ああ、でもKindleの普及度が高く、iBookStoreも開始されていて、しかも街の本屋さんも潰れまくっている米国などでは電子書籍は急速に発展していくのかも知れません。また日本は趨勢から取り残されるのだろうなぁ…。