Chrome、Lion、iOS、Android… 〜OSの話〜

Chrome PC

Google Chrome OS搭載PCが来年半ばにも登場するようですね。当初今年の秋と言われていたので、半年あまりずれ込む形ですが、まあ良いでしょう。かつてはOSのアップデートにすら業界を挙げて一喜一憂していましたが、もはやPCの世界ではOSうんぬんが語られることがめっきり少なくなりましたのでね。

来年半ばといえば、ちょうどMac OS X 10.7 Lionも発売になる頃です。もっともChrome OSとLionはあまり競合しなさそうですが。当面、Chrome OSのライバルは巨大シェアのWindowsでしょうね。

かねてから私はパソコンのOSは、以下のように修練されていくのが理想的だと思っていました。

  • ビジネス ← Linux
  • ホビー ← Windows
  • クリエイティブ ← Mac OS X

決まり切ったことしかしないビジネスユースなら、その気になれば何でもできてしまうWindowsではなく必要十分に仕立てられたLinuxを使う方が理に適っています。

それでも豊富なWindows資産への依存やLinuxのつかみ所の無さからWin→Linuxのシフトは一向に進んでないわけですが、Chrome OSによっていよいよ状況も変わるのではないかと。少なくとも日本以外では。

以前に聞いた話だと、日本ではIT投資の減価償却が終わると「ようやく収穫の時期がやってきた」と考えるのに対して、欧米では数年間単位でITシステムをリプレースしていくのが一般的なのだそうで。減価償却が終わる頃には次のタームが始まるということですね。だとすれば、どうにもならないWindows系資産がない限り、Chrome OSへの移行は割とスムーズに進むのではないでしょうか。

他方で日本では「10年前に開発したWindowsアプリが業務の命綱」みたいな風潮が根強く残っているとも聞きますし、そう簡単にはいかないかもしれません。悲しいかなこの国はベンチャー企業が跋扈して産業界の新陳代謝が活発になされている状況とはほど遠いですし。数年後、外国人から「日本の企業はまだWindows使ってるの?」と驚かれることになるのかもしれません。

実際、セキュリティやコンプライアンスの観点からしても、汎用PCに汎用OSを載せて社員に支給するよりもクラウドサービス専用端末を割り当てる方が何かと無難でしょう。要は全業務をクラウド上でまかなえるところまで持っていけるかどうか。そこで諸外国と日本とでは大きな温度差が生じかねないようにも思えます。

で、OSの話で言えば、近年の話題の中心はモバイル、それもスマートフォン分野。iPhoneがバカ売れしている一方でAndroidの躍進も凄まじいものがあるのだとか。まあそこは、かつてのMac or Winの構図と同様、数の上ではAndroidがiOSを凌駕するのでしょう。

アンドロイドキャラクター

さて、「遠からずそこにWindows Phone 7が食い込んでくるだろう」と見る向きもありますが、それはどうでしょうかね。もはや時すでに遅しの感がしないでもありません。既にかつてのWindowsのポジションをAndroidが占拠してしまっているのではないかと。後発でも採用端末を増やせるか、法人客を囲い込めるか、アプリ開発者を多く引きつけられるか…。何かと競争条件は厳しそうです。もし豊富なWindowsアプリがケータイで動くようになっても嬉しくはないですしね。私はMicrosoftはシェアこそ保ちつつもプレゼンスの面では今後急速に力を落としていくのではないかと見ています。

そうそう、先日SONYがGNUstepがベースのデジタル家電アプリプラットフォームを発表していました。そのニュースを読んでの私の感想は「ああ、10年前にやっていれば良かったのに…」です。そうしてOSを必要とする自社製品すべてに搭載するぐらいの取り組みを行っておけば、今ごろはライセンスを供与する側になっていて、今日の凋落は免れたかもしれないなあと。例えば、BD関連機能を省いたPS3をネットトップとして投入したり、BDレコーダに独自OSを組み込んで磨きをかけたり、VAIOをWindows版と独自OS版の両睨みで展開するといった展開ですね。もっとも当時はMicrosoftに席捲されて死に体寸前のAppleを見せられていたわけで、自前OSを持つことの重要性なんぞを理解することが難しかったのかもしれませんが。

Adobeにはもう付いていかれないかも

AdobeからAcrobat Xが発表されました。私もAcrobatは頻繁に使うのですが、正直ありがたくないアップグレードの連続に辟易しています。

まず不信感を抱かせてくれるのが発売時期とアップグレードの方針。AcrobatはAdobe Creative Suite(以後CSと表記)にも付属する製品です。そのAdobe Creative Suiteはこの春にアップグレードされCS5となりました。そしてAcrobat Xの発売は12月。開発スケジュールの関係でCS5には入れられなかったにしても、CS5の購入者には無償アップグレード権が供与されても良さそうなものです。

過去の例の通りAcrobatの新バージョンを含めたCS5.5が出るようなら、11月までにCS5を買った人はAcrobat 9、12月以降にCS 5.5を買った人はAcrobat Xを有することになり、仲間内でのバージョンの不一致という面倒なことも起こりかねません。それにCS5購入者に対して半年かそこらで最新版でなくなる製品を抱き合わせで売った点も腹立たしいところです。

それから悪意すら感じるのが製品案内にある64bitに関する記述。FAQには「Acrobat Xファミリーは64bit対応ですか?」の問いに「はい。」とあり、Windows環境では確かに64bit対応をうたっているものの、Mac OS X上で64bitアプリとして動作するかどうかには触れられていません。ということは、おそらく64bit対応はできていないのでしょう。だとすると、数千ページ規模のPDFを扱うと容赦なく落ちるという現象は相変わらず改善されていないものと思われます。Mac OS向けの体験版は用意しないとのことですし、ちゃんと「Macの場合は64bit動作に非対応」と書くべきでしょう。

もっとも、私はもうAdobeに期待することはあまりありません。既に所有する現行バージョンが使い続けられれば仕事には事足りますし、目ぼしいバグを潰さないまま、小粒で「そりゃ誰かは使うかもしれないけど…」的な機能追加とGUIの変更でアップグレード版とする手法には、ほとほと愛想が尽きました。

いっそのことAdobeはMicrosoftの傘下に入り、Adobe CSをWindows版のみで展開してくれてもいいとさえ思います。その際、Mac版チームを分社化してくれればもう言うことなし。各製品をWin版とMac版で同じように振る舞うようすることに相当な無理があるように見えますし、その際、割を食うのは決まってMac版なので。

ああ、だとすると私がAppleに期待するのはMac OS Xの遺棄でしょうかね。サブセットとして血を分けたiOSの方をMacで動作させるのに相応しいスケールに育て上げて、ソフトウェア開発に使えるAPIも一新し、あらゆるサードパーティ製アプリのリスタートを促すような。

Excelで旅行申し込みなんて…

先日、とある旅行会社に海外ツアーを申し込んだところ、所定のExcelファイルに記入して送り返してくれと言われました。社内文書じゃあるまいに。どうもパソコン(それもWindows。圧倒的なシェアがあるので)に慣れた人(会社)はそれが普遍的だと思う傾向があるのではないかと。つまり「Web経由で申し込むような人は皆パソコンは使えるはず。ならば当然MS Officeも入っている」といった具合に。解らなくもないのですが、ちと無理もあろうかと。

例えば、近年はコンプライアンスや情報漏えい対策の観点から、データ類を持ち帰れない会社も増えていると聞いています。そのため日頃からパソコンを使っている人であっても、自宅にはパソコンを持っていないか、持っていても趣味に使うだけなのでMS Officeを入れていない人も大勢います。Open Officeなどの無料の代用製品もありますが、そもそもそういった人は自宅でまでその類いものを使いたくないからこそインストールしていないわけです。

結局、その旅行会社に交渉して、パスポートのデジカメ写真と緊急連絡先を知らせるだけで良い事にしてもらいましたが、この先もパソコンよりケータイ/スマートフォンが重要な役割を担う傾向が進むのですし、いくら何でもExcelはないでしょう。

今の時代、以下のような手順がベストだろうと思います。

  1. 代表者がツアーを申し込んだらツアー参加者用のURLが書かれたメールが送られてくる
  2. 代表者は参加メンバーにメールを転送する
  3. メールを受け取った人は、パソコンまたはケータイからサイトにアクセスし、Webフォームに必要事項を入力する
  4. 参加メンバーの誰かが入力を完了すると、代表者にお知らせメールが届く

こうすれば、代表者がメンバー各人から個人情報を集めて申し込ような手間もなくなります。