Windows 8が致命的にダメな理由

WIndows-8-logo

発売から2週間が経ったWindows 8ですが、その前途は多難です。

例を挙げて説明しましょう。近年、居酒屋チェーン店では全テーブルにタッチパネル端末が備え付けられていたり、店員がiPod touchを持って注文を訊きに来たりしますよね。昔は紙の伝票だったのが専用端末の時代を経てiPod touchに替わりました。注文はその都度Wi-Fiを通じて厨房に伝わるのでサービスの迅速性も得られます。また、タッチパネルは場面ごとに表示が変化するので、かつての専用機のようにボタン操作や手順を覚えずとも使えるメリットもあります。

では、Windows 8はこの用途を代替できるでしょうか?もちろんWindows 8を使ってはいけない理由はないものの、1台10万円かそこらする「タブレットにもなるWindows 8 PC」を各テーブルに設置したり、携帯端末としては大ぶりなWindows RT機を接客スタッフ全員に持たせるなんてのは非現実的。かといってWindows Phoneを注文訊きに使うのもナンセンスです。 居酒屋の例は日本に限った話で、あまたあるタブレットの導入例の一つに過ぎませんが、このような事象はいたるところで見つかります。例えば企業でアルバイトを雇い、外回りして簡単なリポートを提出してもらうような用途や、学校で一括導入して生徒に使わせる用途でも、フル機能を持ったタッチパネル対応のWindows機を託すよりiPad/iPod touchなりAndroid端末を持たせる方が何かと都合がいいわけです。

つまるところWindows 8は「タッチ操作が可能なWindows(RTはその機能限定版)」であって、早い話が「自分用」です。個人で使う分には良くても、多くのスタッフ、ユーザーに利用させる場合には向いていません。

そのため既存のWindowsユーザーの乗り換え需要か、せいぜい新しい個人ユーザーを少しばかり獲得するのが精いっぱいです。結果、Windows 8の出来が悪いからではなく、単純に数が出ないのでシェア争いでは苦戦するわけです。

よってWindows 8はパソコン用のOSとしては及第でも、急成長しているタブレット市場では何ら存在感を示せないことが次第に明らかになり、Micoroftは株主から猛烈な突き上げを食らうことになるのでしょう。かといってiOSやAndroidとは同じ土俵で戦わないなら、この先の同社の収益基盤が縮小していくだけです。

iPadではなくiPod touchやiPad miniにも対抗できないと、 タブレット市場では満足に戦えません

そこで、もしMicrosoftが本気でタブレット市場に本腰を入れるなら、Windows RTから旧来のWindows的な要素(デスクトップ画面など)をそぎ落とし、Windows Phone 8と統合して、PCメーカー側の裁量で自由に採用できるライセンス形態で仕切り直すしかないと思います。そうしてさまざまなメーカーからあらゆる形状、画面サイズの安価なWindows RTタブレットが登場するようになれば、ようやく戦う布陣が整います。

しかもWindows RTとWindows 8、Windows Phone 8のすべてで共通のModern UIアプリが動くなら、他にはない強みになります。現状、iOSアプリはMacでは動かず、AndoroidベースのPCはどれほども普及してないので勝機はあるでしょう。

自滅するMicrosoft

WIndows-8-logo

Windows 8が発売されました。でも、この鳴り物入りの新しいOSを私は鬼子と見ています。それもMicrosoftの存亡にかかわるほどの。

そもそもMicrosoftがかつてなぜIT業界の覇者となれたかというと、歴代のWindowsでエンタープライズ分野をガッチリ押さえたから。もちろん個人ユーザーも多いものの、メインは企業、政府・自治体、公共機関、NGO・NPO、学校などですね。一頃のOSシェアたるや実に95%超もありました。

では、それらのユーザーはWindows 8の導入を急務、必然と思うかと考えると…。

Windows 7の場合は、前作のVistaの評判が宜しくなく、XPからのアップグレードや買い替え需要を取り込むことができましたが、Windows 8は何をもって7からの移行を促すのでしょうか?タッチ操作?スタート画面?Windowsストア?それって生産性の向上に役立つの?

ああ、僅かに客先プレゼンを常とする営業マンぐらいはタブレットの恩恵を受けられるかも。とはいえその分野ではすでにiPadが先行しているわけです。

エンタープライズ分野に強いOSという原点を見つめ直せば、今本当に必要とされているのは「格段にセキュアになったOS」にほかなりません。素の状態でも既知のマルウェアに免疫があり、新たな脅威にも耐性が強いWindowsともなれば、誰もがこぞってアップグレードするでしょう。セキュリティ関連企業を丸ごと買ってでも、そこにこそリソースをつぎ込むべきでした。見た目やUIなんかは前と同じでも構わず、むしろ極力変えない方がいいくらいです。

でも、MicrosoftはタブレットとPCの融合などという中途半端で安易な方法を選んでしまいました。よほど隣の芝が青く見え、自分たちがその恩恵にあずかれないことが惜しかったのでしょうが、PCとタブレットやスマートフォンでは使われ方が違うのだから、別製品として開発したほうがどれほど良かったか…。

結局、PC、タブレット、スマートフォン、どれをとってもイマイチな製品にしかならないでしょう。Windows 8は個人ユーザーにしか売れず、いつしか失敗作の烙印を押され、ゆくゆくはMicrosoftの収益と株価を大きく落とすことになると思います。

XP、Vista、7からのアップグレードがこの値段。
ダウンロード版なら3,300円だし、デフレだ…

買うと後悔しそうなWindows 8搭載機

昨日は新しいiPadとMac、そしてAmazonからもKindleの国内販売が発表されました。

そして今夜0時を回るとWindows 8の販売が解禁されます。秋葉原あたりではカウントダウンイベントが開催されるのだとか。でも今回は事前にRelese Preview版やRTM版(利用期限がある他は製品と同じ)が出回っているわけで、いち早く手に入れたところでどうなるわけでもないというのに。まあ、暇なお祭り好きには良いでしょう。

さて、各社からWindows 8搭載機が続々と発表されていますが、ここでは買うと後悔しそうな機種の見分け方を書きます。私も別に関係各社に恨みはないものの、知り合いが買って後悔するといった事態は避けたいので。

まず、「タブレットにもなる」という宣伝文句の機種は私は買わない方がいいと思います。タッチパネル方式の液晶モニタがキーボードから外れたり、キーボードを回転させるとタッチパネルの土台になったりするやつですね。ギミック的には面白そうですが、二兎を追う者は一兎も得ず。タブレットにもなるWindows PCとは、要するに「Windows PC並に重たくて、バッテリーの減りも早いタブレット風のやつ」なので。タブレットとして使おうにも、その恩恵はほぼ受けられないだろうと。

よってWindows PCとしての面に重きを置くなら、旧来通り据え置きで使うことが前提の機種を選んだ方が無難です。いたって普通の形をしたラップトップ(日本で言うところの「ノート型」)を選ぶのが妥当かと。

次に要注意なのがWindows RTを搭載した機種。日本未発表のSerfaceなんかがこれに当たります。こちらの注意点は、「Windows」の名前を冠しているものの昔ながらのWindowsアプリは動作しないこと。日本語入力のATOKすら使えません。動くのはMicrosoftが新しく用意したOfficeや、新たにModern UI向けに開発されたアプリだけです。手持ちのWindowsアプリ類を使いたい人は買ってはいけません。

Windows 8がもたらす未来

いよいよ一週間後の金曜日、Windows 8が発売されます。私も少し前からお試し版を使っていますが、率直な感想は「…」。ちょっと言葉に詰まる感じです。Metro UI改めModern UIは一見するとシンプルで快適そうに見えるものの、どうにも思想的に無理があるような…。

Windows8のスタート画面
Windows 8のスタート画面は、「情報表示付きのランチャー兼アプリ実行環境」といった感じ

例えば、Modern UIによるスタート画面に「ミュージック」という項目が見つかります。でも、外部メディア内のバックアップから音楽ファイルをインポートしたい場合、Modern UI上では完結せず、旧来のデスクトップ画面を経由する必要があります。つまり、ユーザーは1台のマシンで毛色の違う二通りのUIを使いこなさなければならないわけです。これは多くの人にとって負担でしょう。

まあ音楽に関して言えば日本でもいずれダウンロード購入できるようにするはずです。もはやCDが売れない時代だし。

だとしても、タブレット用のOS(UIおよびアプリの実行環境)とPC用のOSが二段構えになっているハイブリッド方式では、多くのユーザーには受け入れられなさそうに感じます。

実際、ろくにパソコンを使ったことがない年老いた両親にWindows 8搭載タブレットをプレゼントしたとして、果たして使いこなしてもらえるかははなはだ疑問です。スタート画面のライブタイルなら目ぼしいものをタッチするだけですが、不意にデスクトップ画面に切り替わろうものなら、その度にヘルプを求められ、教えても教えても覚えられず、次第に訊くことも遠慮するようになって、いつしか利用も諦めるなんてのがオチだろうと。

Microsoft Surface
デスクトップ画面に切り替わることのないSurfaceなら、 ひょっとしたらiPadと同様に使ってもらえるかも知れませんが、 日本での発売は未定なのですよね。 完成度や実用性も未知数だし…

ちなみにAppleはiPadではファイルの存在をユーザーに意識させないように作ってあります。ファイル操作はMacなりWindows PCで行わせると。そもそも別のデバイスなので、それぞれのユーザーは無理なく受け入れられます。iPadを使っている途中でふいにMacの画面に切り替わるなんてことはあり得ません。そう、できることを不自然にならないように制限するのがAppleの極意、得意技ですね。

ときおりiOSとMacのOS Xの統合、あるいはタッチパネル採用のMacの噂も流れますが、Appleはそういう選択はしないわけです。用途によって最適なツールは違うのであって、林檎の皮をむくのに10得ナイフなんか要らないと。

一方、Microsoftは昔から「全部入りの何でもあり」に持っていきがちです。今回も、タブレット用のOSとPC用のWindows、両方を混在、連携させる形で載せてしまいました。まさに10得ナイフ的な考え方ですが、用途によっては100均で売っている果物ナイフにすら使い勝手で劣ります。

だいたいWindowsが使えるタブレットとしては数年前に「オリガミ」で大失敗したはずなのに、大して進歩のないものを出してくるとは…。

おそらく先行するiPadやAndroidタブレットとの差別化すべく、「膨大な数のPCアプリも動くタブレット」を目指したのでしょうが、だったら小型軽量のラップトップの方がよっぽど適しているわけです。

また、ホームユーザーならともかく、ビジネスユースではそもそもスタート画面は不要でしょう。何かしら業務を遂行しようとすれば、どうせデスクトップ画面に切り替えるのだから。 というわけで、Microsoftは遠からず以下のどちらかの方法を選ぶことになると思います。

  • Modern UIをオフにし、スタートボタンを復活させる設定項目を設ける
  • Windows 7の販売を続け、ダウングレードも認めるる

前者は「Windows 7のように使えるようにする」だし、後者はは「Windows 7の販売を止められない」と言い換えることもできます。いずれも後戻り、いや脇道にそれたのが元に戻る感じでしょうか。

Windows 8では販売価格やアップグレード料金を下げていますし、二世代のOSを継続的に販売、サポートし続けるなら、同社の収益性を下げますよね。PCメーカーも販売店もWindows 7機と8機を併売するとすると厄介な事になりそうです。特にユーザーサポート面で。アップグレードする人だけでなく、ダウングレードの需要もあるでしょうし。

よって私はWindows 8を「Windows MeやVistaの悪夢の再来」「Microsoftの漂流の始まりを象徴する製品」になると見ています。この先、ITベンダーも巻き込みながら迷走を続けることになだろうと。これまで何とか薄利でも頑張ってきた日本のPCメーカーも、いよいよトドメをさされるかもしれません。

Microsoftは自社製品を持つソフトウエアメーカー各社に「開発費持つからアプリをModern UIに移植してくれないか?」と持ちかけていますが、私が決定権者なら様子を見ますね。Modern UIおよびWindows 8搭載タブレットはきっとコケて、まるで「なかったこと」にされる可能性すら大だと踏んでいるので。

Windows 8で楽になったこと

いよいよ明日の未明(米国では今日)、新しいiPhoneとiOS 6のリリーズ時期が発表されますが、今回はWindowsの話。

来る10月26日、Windows 8が発売になります。

WIndows-8-logo

 Windows 8で個人的に嬉しいのはスクリーンショットの加工が楽になったこと。なにしろウインドウの外枠がベタ塗りの長方形なので。ウインドウ単体のスクリーンショットなら手間要らず。画面全体の場合でも簡単にトリミングできます。

ソフトウエア製品やWebサービスのマニュアル類を作成する際、ウインドウの絵を多用しますが、Windows XP・Vista・7ではウインドウが角丸だったため奇麗に見せようとすると四つ角を丸く落とす必要がありました。

また、Vistaや7はタイトルバーが半透明だったので背後の模様が透けて汚く写り、撮り直すこともしばしば。要するに余計な手間ひまがかかっていたのですよね。

私は以前、IT機器関連各社のマニュアル類を専門的に作成する会社に身を置いていたのですが、これであの会社の製作作業も少しは楽になったかも。でも一方でお得意先の製造業メーカーがことごとく事業を見直し、製品ラインナップが縮小されて受注の単価や総量は下がっているはず。せめてマニュアルの一斉改編ニーズによる「Windows 8特需」が多少なりとも埋めてくれると良いのですが…。

それにしてもMicrosofにとっては正念場ですね。Windows 8、PC向けにはそれなりに売れるでしょうが、Windows 8へのアップグレード料金は$39.99。Windows 7は$119.99〜だったので、1/3に値崩れした形です。

そして何といっても最大のテーマはモバイル市場でどう戦うか。拡大するこの分野で向こう1年以内に一定のシェア、プレゼンスを確保できなければ致命傷にもなり兼ねません。

Windows 8の特徴は二つのOSが同居、連携しているように見えること。Windows Phoneは当然として、タブレット端末でもスッキリしたタイル表示のModern UI design(旧称「Metro UI」)だけですべてを完結できれば及第。でも、何かを達成するためにいかにもWindows風のデスクトップを介在させる必要があるならアウト。だったら軽量のラップトップPCを使う方がよほど便利なわけで。

果たしてこのハイブリッド風OSで先行するAppleとGoogleの牙城にどこまで食い込めるかは見物です。私はかなり厳しいと見ているのですが…。