間違いだらけの水中カメラ選び

先日一緒に潜ったチーム6人の内、私を含む3人が一眼レフ水中カメラユーザでした。

1人は昔から写真を趣味にしていたらしく、ダイビング歴が約半年と浅いにも関わらず交換レンズとレンズポートを複数個持っていて、既にそれなりの楽しみ方をしているようでした。

ただし、もう1人の方はダイビング歴約10年のベテランですが単に見栄で使っているという感じです。というのも彼がNikon D300あたりのカメラに装着していたのはスームレンズ。いわゆるキットレンズのどれかだったので。

いや、そのレンズが悪いとは言いません。でも実際に撮った写真を見せてもらったところ、案の定ニザダイやらコロダイやら、そこそこのサイズの魚が青かぶりして写っていました。彼のAnthis製水中ハウジングにはINON Z-240の2灯に加えてSOLA 1200ビデオライトまで付けてあるのに。おそらく大きく映したいがためにズームを掛けたのでしょう。被写体に自分から寄ることはせずに。こうなると無残ですよね。

おまけに話しぶりを聞くと自身ではワイド写真を撮っているつもりのようですが、レンズポートはフラットタイプですし、平然とズームを掛けるのでほとんど記念撮影用も同然。早い話がコンデジでも十分な写真をわざわざ高価で巨大で重たい一眼レフのセットで撮っているわけです。ストロボ光も届いていないし…。

揚げ句の果てに、別のビギナーダイバーが「水中カメラの購入を検討したい」と言うと「最初から一眼レフで始めるといいですよ」と。私はあわてて否定せざるを得ませんでした。

 「そんなのダメダメ。一眼レフを持つなら自分が何をどんな風に撮りたいかを決めてからじゃないと。それまではコンデジの方が良い」

私も一眼レフ水中カメラを初めてまだ半年の身ですが、この点は絶対的な真理のはずです。カメラ本体はいいとしても、交換レンズやレンズポート、ギア類はけっこうな出費になりますので。ハウジングが大きくて重い分、旅行時の運搬も厄介になりますし。

一眼を使いたいか一眼を使っていることを誇示したいだけの彼はそれでいいかもしれませんが、せっかくのルーキーを下手にそそのかしてもらっては困ります。

私が考えるに、水中カメラ選びの鉄則はこうです。

  • 既に陸上で一眼(ミラーレス含む)を使い慣れている人以外はコンデジから始めるべし
  • コンデジで水中写真の経験を積んで自身の好みの傾向がはっきりしてきたら、一眼も検討してみるとよい
  • 目指す絵がコンデジでは撮れないか、一眼の方が撮りやすいのであれば、一眼の導入に踏み切るべし

大ざっぱに言うと、マニュアルフォーカスを必要とする厳密なマクロ撮影か、ドームポートを付けて広範囲を映し込みたい広角・超広角写真に行き着くのでなければコンデジで頑張った方が良いような気がします。

さあみんな海に行こう!

私の知人が何人か3連休にかけて海外にダイビングに出かけます。彼らも以前は年に何度もリゾートに出向くような感じではなかったのだけど最近はそうですね。そういう私も同様。前は年に1~2回、南の島に行かれれば満足だったのが今では年間6回を越えるペースで海外や沖縄に足を運ぶようになりました。

各人で事情は違うにせよ共通の背景はいくつかありそうです。

1. 円高が進んで海外旅行に割安感がある

もっともこれの信憑性は怪しいですね。一方で燃油代も上がっていますし。例えばパラオのクルーズ船ツアーは円安だった昔の方が圧倒的に安価でした。なにしろクルーズ船は一度の航海に何万ガロンもの軽油を使うので。陸ステイのツアーはそこまでではないにせよ、ダイビングボートにも例外なく燃油が必要です。

2. 経済の停滞で休暇が取得しやすくなった

この影響は確実にありましょう。多くの業界で、かつての休日を休めないほどの忙しさがなくなったはずです。

3. 総じて物欲が減退している

実際、私は欲しいと思うモノが少なくなりました。とはいえ消費への意欲はあるので「そうだ、南の島にダイビングに行こう」となるわけです。以前は何十万円もするAV機器を背伸びしてでも買ったものですが、今はもう。

4. デフレで物価が下がった

今や40型の液晶テレビが5万円、Blu-rayレコーダが3万円、パソコンに至ってはケータイよりも安価というありさま。衣料ではUNIQLOが国民の制服であるかのように幅を利かせ、牛丼は300円していません。日用品の多くが100均で揃い、必要十分で選んでいけばモノを買うときの負担感は確実に低下しています。

所得が横ばいだったとしても住宅ローンや子供の教育費などを抱えていないなら、経済的な余力を他に振り向けやすくなったと言えそうです。

5. 潜在的なストレス

難しい時代に差しかかり、多くの人が癒しを必要としているのだと。ダイバーなら意識が海に向かうのは当然でしょう。

6. 大震災の影響

これもありそう。つまり、あのとてつもない震災によって、あらためて人の命のはかなさとモノを持つことへの羨望や執着が薄れ、人々が「買うなら心に残る体験を」という考え方に変わったと。

7. 環境変化への警戒感

これは私だけかも知れませんが、昔よりも海が劣化している気がしてなりません。劣化という言葉は不適当かもしれませんが、温暖化や環境破壊によって海の中は確実に変化しているのを感じます。古いダイバーが顔を合わせたときによく出る会話が「パラオのブルーコーナー、昔ほど面白くなくなったよね…」だったりしますし。

この先どうなっていくかは解らないものの、温暖化で珊瑚が死滅するだけでも生物相が大きく変わりかねないので「今のうちになるべく楽しんでおこう。10年後、20年後のダイビングは今ほど面白くはないかもしれないから」という思いが働きます。

もちろんこれらは私のダイビング仲間という限られた人たちに当てはまりそうなだけで、もっとサンプルを広く集めたら違ってくるかも知れません。

ただ「もはや日本はモノ作り偏重でやっていかれる段階じゃない」ということは言えそうです。幸いなことに行き渡り感もありますし、人々が必ずしも物質的な豊かさを望まなくなったのだと。

もしそうなら今後は良質なサービスとの結びつきが薄い製造業は生き残りが難しいかも。単にモノを作って売るのではなく、素晴らしいユーザー体験をもたらすためのモノを買ってもらわなくては。

折しもスティーブ・ジョブズ氏の訃報が伝えられましたが、彼がAppleで成し遂げたことが、まさしくそれだったのだと思います。

伊豆大島(2)

二日目は2本とも秋の浜。打ち寄せる波も治まりつつあったので今度はカメラを持って入りました。

ただし、水中もまだうねっていたため両手撮りは不可。岩に捕まるために左手側のマニュアルフォーカスダイヤルが回せず、オートフォーカス頼みの運任せ写真になってしまいました。

でも今回の主眼は卒業するショップスタッフと一緒に潜ることだったので、まあいいでしょう。フォトダイビングはまた次回ということで。

ギンポの仲間の後ろ頭
ギンポはこっちを向いてくれなかった
サキシマミノウミウシ
サキシマミノウミウシ。大写しにしたけど2〜3cmの個体です
オトヒメエビ1
オトヒメエビ(1)顔のアップ
オトヒメエビ2
オトヒメエビ(2)引きのショット。惜しい、ハサミの手が見きれちゃった
カンムリベラの幼魚
カンムリベラの幼魚。逃げ回るので撮るのがたいへん

城ケ島の思い出

このたび知人が城ケ島のダイビングショップから巣立つとのこと。何事にも終わりは来るものです。名残惜しいでしょうが、良い思い出がたくさんできたようで、その点はなにより。

私が初めて城ケ島を訪れたのは約10年前の4月。当時の仲間が日帰りで潜りに行くということで車に乗っけてってもらいました。でも私はすでにドライスーツを手放していたため丘番です。そのときの仲間はちりぢりになって、もう長いこと会ってないなぁ…。

仲間の一行がボートに乗り込んで1本目のダイビングに出発するのを見送った後、近くを散策するとなかなか感じのいい磯を発見。当然ながら生きもの探しのスタートです。短パン&サンダル履きなので、そこそこ海辺を動き回れます。4月の海水温は低いものの生来の暑がりな私には気になりませんし。

その磯には貝採りに来たらしき人が何人かいましたが、おそらくお目当てのツブ貝の類いは見当たりません。目に付くサイズのものは既に取り尽くされていたのでしょう。その代わりに(?)アメフラシがたくさん集まってきていました。そしていたるところに黄色いウミソウメンが。そう、アメフラシの卵塊ですね。ウミソウメンが食用になり、美味だと言う人もいることは知っていたものの、食べ方までは知らなかったのでそっとしておくことにしました。

ウミソウメンを食べるのを諦めて他の生きものを探すと、いました、モンツキカエルウオが。それも水深わずか15cmの小さな岩穴に。こんなこともあろうかとデジカメをハウジング(懐かしいDIV製オーダーメイドの)に入れて持ってきていたので、おもむろに撮影を開始。カメラを持った手だけを水に浸けての水中写真撮影は初めての経験です。穴居性の魚なのでカメラを近づけても逃げないのですが、周りの岩が邪魔でなかなかいい具合に捉えられません。しかも水面直下は明るすぎて液晶モニタが見えない…。

結局、いい写真にはなりませんでしたが、グリーンがかった春先の海に潜った仲間は大して収穫もなかったとのことで、まったく潜らなかった私が一番の収穫を得たという貴重な体験をしました。

さて、二度目に城ケ島を訪れたのは5年前の春。馴染みのダイビングスタッフの最後のツアーだったので。もちろん私は丘番ですが、むしろそれを望んでいたぐらいです。新しいデジカメをマクロコンバージョンレンズを装着したハウジングに入れ、皆の出港を見送ってから、また同じようにカエルウオを探そうと喜び勇んで思い出の磯に出向いたところ、なんと辺り一面テトラポッドで埋め尽くされていました…。

イカ焼き
失意の中、イカ焼き食って帰ったんだよな

以来、私は城ケ島には行っていません。

Snow Leopards

台風15号、厄介な台風ですね。各地で深刻な被害が及ばないことを願うばかりです。

この三連休、沖縄の天候は予想されたほどは崩れなかったようですが、今さら講習ポイントで潜ってもね…。なお、搭乗予定だった今日の復路便は悪天候の中でのフライトだったためキャンセルで全額払い戻しになりました。

さて、海に行かれなかった代わりではないですが多摩動物公園に行ってみました。私は予定がなく天気がいい休日には散歩がてらよく訪れます。坂が多くてちょっとした運動にもなりますし。

写真は人気のユキヒョウの母子。

ユキヒョウの母子

今年は三匹の子ヒョウが生まれました。他にもチーター、マレーバク、アミメキリンに赤ちゃんが産まれてます。子バクの瓜坊ガラは早くも消えかけてきましたが。

私が動物園に足しげく通うのは、実は水中撮影のための写真の練習が目的だったりします。さすがにカメラをハウジングに入れたりはしてはいませんけど。

水中撮影の練習なら水族館の方が適しているように思うかもしれませんが、違いますね。水族館は暗くて不自然な光源が多いので。マクロ撮影も不可能ですし。どんなに頑張ってもダイビングのときのような写真にはなりません。だったら動物園で動物の行動を予測して待ったり、フレーミングを考えつつシャッターチャンスを狙う技量を磨く方がよほど上達には役立つはずです。

言い換えると、アマチュアレベルの腕前の我々は、普段から習慣的に生き物の写真を撮るぐらいないと、いざ水中で撮る生き物写真もなかなかいい感じにはならないと思います。