セルフパブリッシングは簡単…ではない

オリジナル写真集の電子書籍『FROGFISH.JP』を作成し、出版してみました。

写真集『FROGFISH.JP』

過去に自身で撮った水中生物写真から厳選して100点あまりを収録しています。iBook StoreGoogle playストアAmazonのKindleストアで販売中です。

いやぁ良い時代になりましたね。いわば同人誌みたいな書籍を世界的にメジャーなブックストアで販売できるのだから。以前なら写真集なんて有名なプロしか世に出せませんでしたよね。もちろん自費で印刷と製本を手配することはできたけど、それだと手売りになってしまいます。

でも、それらのメジャーストアで電子書籍の販売を開始するまでの道のりは結構大変でした。

一番苦労したのはAdobe InDesign CC(2014リリース)の動作が安定しないこと。特に目次と索引を更新しようとするとアプリが頻繁に落ちます。しかもその際に目次の定義が消えるので、その都度設定し直しです。これには参りました。

そこで試行錯誤の結果、発見したことを備忘録として書いておきます。

InDesignの目次更新でアプリが落ちる件:

解決策は「余計な段落スタイルを削除する」でした。

目次を含む.inddファイルで「目次スタイル…」を実行して目次を定義すると、段落スタイルパネルに余計な段落スタイルが追加されます。

InDesignの段落スタイルパネル

パネル内の下の三件(扉タイトル-E、写真タイトル-E、索引タイトル-J)はこの.inddファイルには含まれず、ブック内の他の.inddファイルから勝手にインポートされた要素です。

そしてこれらがパネル内にある状態で「目次の更新」を実行するとアプリが落ち、次回起動時には目次の定義が壊れています。推測するに内部データに混乱が起きているのでしょう。

よって「目次の更新」の前に段落スタイルパネルで「未使用をすべて選択」を実行し、不要な要素を削除しておく必要があります。

EPUBの出力で警告が出る件:

スクリーンショットを撮り損なったけど、EPUB出力の最後に目次索引関連の警告が出た場合はどれかの.inddファイルにリンク切れの要素が含まれているようです。ハイパーリンクの要素になっているものの、リンク先の情報が消えているテキストが含まれている状態ですね。

この場合、リンク切れを探してリンク情報を設定し直してやればOKです。

Kindleのプレビューは当てにならない:

Amazonに出品するにはEPUBをmobi形式に変換してやる必要があります。変換はKindle Previewerアプリでできる他、Kindle Direct PublishingでEPUBをアップロードすれば自動的にmobiに変換されるようです。

それはいいのですが、Kindle Previewerによるプレビュー表示は不正確で当てになりません。特にフォントがボロボロに表示されがちです。

Web上のプレビューも然り。文字の欠落が起こります。下の絵のピンクの箇所がそうです。

kendle-previewer

他にもゴシック体のテキストが明朝体で表示されたりもします。

どうやらMac版のKindle Previewer、 iPadのKindleアプリ、WebのKindleプレビュー機能のそれぞれで表示状態が食い違うようです。どれを信じていいのか。

結局、この問題は上手く解決できませんでした。

英文には英語フォントを使うべし:

InDesign CCで固定レイアウトEPUBを書き出すとフォントが埋め込まれるので、その本を販売するにはライセンス的に問題ないフォントを使う必要があります。最も都合が良いのは源ノ角ゴシックでしょう。素晴らしく自由なライセンス形式だから。

ただし英文にも適用したら、Kindle Previewerで単語の間のスペースが詰まって表示されました。Kindle Previewer側の問題かもしれないけど、英文には英語フォントを使ったほうが無難です。

源ノ角ゴシックのHeavyは避けたほうが良い:

源ノ角ゴシックのHeavy(最も太いウェイト)を使うと、iPadのiBooksでその文字が少しずれて二重に表示されました。

源ノ角の表示イメージ

Heavyはマイナーなウェイトだからかな。一般的なのはLight、Regular、Boldってところだから。

この問題はウェイトを一つ落とし、Boldに置き換えることで解決しました。ちょっと残念だけど。

Google Playは固定レイアウトEPUBを扱えない?:

iBook Storeには固定レイアウトEPUBを出品できました。Kindleストアにも固定レイアウトEPUBをアップロードすれば自動的にmobi形式に変換されます。でもGoogle Playに固定レイアウトEPUBを出品しても公開にできませんでした。アップロードまではできるけど利用可能にならないのですよね。あれこれ設定を変えてみたものもダメ。iPadのGoogle Playアプリでも表示できませんね。Google Playは固定レイアウトEPUBには未対応なのでしょうか。

結局、EPUBは諦めてGoogle PlayストアにはPDFで出品しましたが、早くこの問題が解決してほしいものです。そうなれば大手3ストアとも固定レイアウトEPUBだけを用意すればOKになるので。

あるいはiBook StoreとKindleストアでもGoogle Playストアと同様にPDFを販売できるようになればPDFに統一できるのですが。

既知の問題はこれぐらい。私はMacとiPadでしか検証できないので、その他の各種デバイスで表示させた場合の検証はまったくもって不十分。電子書籍によってセルフ出版ができるようにはなったけど、電子書籍特有の問題があることも痛感しました。

そして今後も内容だけでなくフォーマットについても随時試行錯誤で修正して公開し直すことになるでしょう。

なお、現時点ではiBook Store版がもっとも完成度が高いという印象です。

写真集を出版しました

このたび写真集の電子書籍『FROGFISH.JP』を出版しました。

写真集『FROGFISH.JP』

過去に自身で撮った水中生物写真から厳選して100点あまりを収録しています。iBook StoreGoogle playストアAmazonのKindleストアで販売中です。

私の手持ちのiPad版Kindleアプリは動作が緩慢です。同じくiOS版のGoogle playアプリの動作も怪しいです。AndroidやKindleの事情は解らないけど、iOSデバイスをお使いならiBook Store版をお勧めします。

価格は$9.99。こんな時代だし、ダイビングの代金はダイビングの成果で捻出したくて。

私は無名のアマチュア写真家なので無料にするべきかと思ったけど、無料にしてもせいぜい友人知人が見てくれるだけかなと。それに無料だとどうしても「買うに値しないもの」的な扱いを受ける気がしたので、ここは思いきって有料にしました。円安だから日本では1,200円前後。気軽に買うには高いけど写真1枚あたり10円くらいです。無料のサンプル版もあります。

また、無名の私が出す写真集には何かしら便利な仕掛けが必要だと思ったので、各写真には生物の和名と英名を併記しました。例えばクマドリカエルアンコウはWarty Frogfish。いぼいぼなカエルアンコウという意味ですね。同じくダンゴウオはLumpsucker。Lumpはこぶ、Suckerは吸盤です。でもウミウシ類の英名は日本のように「○○ウミウシ」って感じではありません。

で、例えば我々が海外のダイビングサービスを使う際、ガイドがフィリピン人という場合も多いわけです。そして私も含めて多くの日本人は英語が苦手です。最近は状況が変わってるかもしれないけど、昔の学校での英語教育は魔法の呪文を覚えるような感じだったから。コミュニケーションの手段ではなく、単にテストのための知識だったわけです。

まあダイビングサービスで英語を話せなくても、せめて見たい生物の英名が言えるといいですよね。片言で「I want to see  juvenile  Mandarinfish.(ニシキテグリの幼魚が見たい)」とか。そう、一般的な図鑑には学名は載っていても英名は載ってないのですよね。

あるいは逆に日本人ダイバーを受け入れる現地ガイドが和名を言えれば、それも我々にとっては有り難かったりします。よってそれぞれが生物の和名・英名を覚える用途に使ってもらえればいいだろうと。

良かったら取りあえず無料サンプル版を試してみてください。