家を買うって?

友人の一人がマンションの購入を検討しています。すばらしい。私にはとても真似できないことです。なにしろ10年後の所得が今の水準を超えているどころかキープできている自信がないので。もちろん大きな資産もありませんし。

確かに住宅ローンを始めるなら早い方がよくて、月々の支払いも賃貸住宅の家賃より安く設定できるかも。もし転勤となった場合も所有したまま貸し出すことができましょう。

ただしこの先の日本に待ち受けていることの一つは人口減少と高齢化社会の顕著化です。経済規模が縮小するのはもちろん、特に住宅用の不動産は供給過多になるのではないかと。そして需要には二極化が進むでしょう。都心の人気物件ならともかく、私でも手が届きそうな郊外の物件なんかは…。

また、半世紀に渡り日本経済を支えてきた製造業(特に電気の)がここにきて痛んでいます。エコポイントという麻薬も切れてしまいました。せめて未曾有の円高が収まればという思いはあるものの、この先円が大きく安くなるということはマネーの行き場として日本が魅力的ではなくなることを意味します。ジレンマですね。自身が倒れれば待望の円安がやってくるかもしれないという。

いや、アメリカで政権交代が起きたり欧州が奇跡の急回復を遂げるなどして日本の凋落ではなく外的な要因で意外に早く円安に振れることがあるかもしれません。でも、グローバル競争の中で新興国が力をつけてきた以上、製造業界が今の雇用規模を保つことは不可能でしょう。本当に競争力を保てる分野を残して、かなりの縮小を強いられると思います。段階的であれ数十万かそれ以上の人材が大手メーカーの庇護から外れようものなら、またデフレは深刻化しかねないですよね。ほとんどみんなの所得と購買力が下がるのだろうし。

さすがに公務員だけは安泰、ともいかないでしょう。経済がより深刻化するにつれ今よりも公務員バッシングの声は高まるでしょうから。Tax EaterがTax Payerよりも報酬や年金面で勝っているオーバーウェイト経済をいつまでも続けられるわけがありません。

あんまり悲観的になるのはよくないと思いつつも、私には日本経済がこの先いっそう厳しい局面に突入する気がしてならないのですよね。

もっと言うと住宅ローン期間の向こう20〜30年といったスパンで考えると、その間の大震災の懸念もないわけではないし。今の保険や公的な救済策はどれだけ頼れるのでしょうかね。新しい物件は耐震にも優れ、自宅周辺が甚大な被害に見舞われる確率はかなり低いとしても、無傷か軽微なダメージでやり過ごせる保証はどこにもありません。心配性に過ぎるかもしれませんが、家賃支出をローン支払いに替えれば合理的だったのが、ある日を境に失った資産へのローン支払いと新たな家賃支払いのダブルになる危険性は否定できないだろうと。

ああ、いい流れのインフレが起これば住宅ローンの返済も楽になるかな。でも、経済が縮小していく中でそんなに都合良くいくわけがないような…。

うん、やっぱ私は家は買えないです。ローンの額面は据え置きで所得が減ろうものなら私の財力では持ちこたえられないし、先々売ろうにも貸そうにもローン残高には見合わなかったりする公算が高いと思うから。

まあ、他者の価値観に口を挟む気もありませんが、いずれにせよその時々で分相応の住宅に住まう方が私の性にも合っています。