水中でのCyber-shot HX5Vの使用感

本来ならデジカメを新調したら慣熟訓練をすべきところを、先のマクタンの時はついつい無精して、ろくに取説も読まずにぶっつけ本番。そのため海にエントリーし、まずはと「おまかせ撮影モード」で撮ろうとして初めてストロボ強制発光の設定がないことに気付きました。なるほど、ストロボを焚くかどうかもおまかせってことなのでしょう。

ならばとモードを「Pオート」に切り替えて撮影開始。こちらなら強制発光の有無やISO感度、露出補正、ホワイトバランスなどを設定できます。設定は電源OFF後も引き継がれるので一度決めてしまえば以後は楽です。適当に設定したら上手くいった感があったので、結局マニュアルモードなどは試さずじまいでした。後で振り返ってみると露出は-2.0ではなく、もう少し開放しといても良かったようにも思いますが。

で、HX5Vを実際に水中で使用した感想は「なかなか良さそうだ」です。最新の設計と高感度Exmoreセンサーのなせる技なのか、スキルは向上していないのにカッチリとした絵が撮れる割合が増えて歩留まりが上がった気がします。 そして感激なのは何といってもマクロへの切り替えが要らないこと。それまで使っていたPowerShot G9では、いちいち通常モードとマクロモードを切り替えてやる必要があったのですが、HX5Vでは近い被写体に寄るだけで自動的にマクロモードに切り替わります。まあ、最近のデジカメでは当たり前の仕様ですね。そもそもマクロモードに切り替えるかどうかは純粋にカメラの都合だったわけで、ようやく本来のあるべき姿になったんだなという思いです。3年以上前のデジカメを使っている人は、そろそろ買い替えてみるのもいいのではないでしょうか。

次なるメリットは、ISO感度のダイヤルが無いこと。PowerShot G9では何かの拍子にダイヤルが回ってしまい感度が目一杯上がってザラッとした画質の写真が撮れてしまうことが何度かありました(下の写真)。

クマドリカエルアンコウ(黄色)
せっかくのFrogfishがISO1600では…

自身の不注意と言ってしまえばそうなのですが、コンデジはコンデジ。わざわざ一眼レフっぽい設定機構を設けることが本当に良いのかは疑問です。HX5Vのように、フラッグシップ機でありながらもほぼフルオートで撮ることが前提の潔い仕様の方が私は好きです。もっとも、HX5VのPオートでもISO感度が固定されるわけではないようなのですが。

Cyber-shot HX5Vの水中写真サンプル

前置きっぽいエントリーが続いたので、そろそろ実際に撮影した写真をUPします。

6月中旬、撮影地はフィリピン、セブ州マクタン島およびボホール州カビラオ島近海。連日、海の中がやや白っぽかったこともあって、ひたすら底にいる生き物を撮っていました。

ちなみにこのときの機器構成は以下の通りです。

カメラ:Cyber-shot HX5V
水中ハウジング:Seatool製 HX5V対応ハウジング
外部ストロボ:INON S-2000 x1
クローズアップレンズ:INON UCL-165M67、UCL-330

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カクレクマノミ

タイトル:-
露出補正:-2
露出時間:1/160
Fナンバー:4.5
ISO感度:125
レンズ焦点距離:11.51mm

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ヨウジウオの写真

タイトル:「J」
露出補正:-2
露出時間:1/200
Fナンバー:4.5
ISO感度:125
レンズ焦点距離:11.76mm

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ギンポの写真

タイトル:「草、美味し」
露出補正:-2
露出時間:1/400
Fナンバー:5
ISO感度:125
レンズ焦点距離:14.64mm

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カサゴ

タイトル:-
露出補正:-2
露出時間:1/320
Fナンバー:4.5
ISO感度:125
レンズ焦点距離:9.87mm

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イソギンチャクとエビ

タイトル:-
露出補正:-2
露出時間:1/249
Fナンバー:9
ISO感度:125
レンズ焦点距離:9.65mm

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カサゴの目のアップの写真

タイトル:「充血」
露出補正:-2
露出時間:1/249
Fナンバー:10
ISO感度:125
レンズ焦点距離:16.37mm

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ミカドウミウシ

タイトル:「モーモーのベロ」
露出補正:-2
露出時間:1/100
Fナンバー:11
ISO感度:800
レンズ焦点距離:7.24mm

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アカホシカクレエビ

タイトル:-
露出補正:-2
露出時間:1/200
Fナンバー:10
ISO感度:800
レンズ焦点距離:10.54mm
コメント:よく見ると右腕がありません。しかも卵持ってます

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アカフチリュウグウウミウシ

タイトル:「障害物競走」
露出補正:-2
露出時間:1/100
Fナンバー:5
ISO感度:160
レンズ焦点距離:15.31mm

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ハゼとエビの正面の写真

タイトル:「めんそーれ」
露出補正:-2
露出時間:1/640
Fナンバー:5
ISO感度:125
レンズ焦点距離:17.51mm

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オルトマンワラエビ

タイトル:「オルトマン」
露出補正:-2
露出時間:1/40
Fナンバー:4
ISO感度:125
レンズ焦点距離:5.93mm

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ミナミギンポ

タイトル:「いつもにこにこ」
露出補正:-2
露出時間:1/100
Fナンバー:10
ISO感度:125
レンズ焦点距離:8.08mm

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カエルアンコウの後方からの写真

タイトル:-
露出補正:-2
露出時間:1/160
Fナンバー:4.5
ISO感度:125
レンズ焦点距離:11.51mm

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魚類発祥の地とも言われるだけあってフィリピンにはゴージャスな有名ダイビングポイントもたくさん存在するわけですが、セブ空港があるマクタン島近海の生物相も案外捨てたもんじゃないです。かなり楽しめます。特に小っこいのも好きな人にとっては。

HX5Vのハウジング選び

HX5V向け水中ハウジングには、私が知る限り以下の選択肢があります。

ただし、Ikeliteは米国インディアナ州のメーカーで、国内に商品が入ってきているか、容易に取り寄せられるかは不明です。製品写真を見る限り外部フラッシュと連動させるための機構もなさそうなので、およそ現実的な選択ではないでしょう。

ACQUAPAZZA or Seatoolは好き好きなのですが、高価なACQUAPAZZA APSO-HX5Vの方が断然作りは良さそうです。耐食アルミの筐体はカメラのストロボ光を外に漏らしませんし、標準仕様で67mmの各種コンバージョンレンズが付けられるのも魅力的です。

ただし、公開されたAPSO-HX5Vの製品紹介を読むと気になる記述が。「レンズポートは次の二種類から選択」とあります。

  • ワイド重視タイプ(広角側でケラレないが、6倍ズームでレンズがレンズポートに衝突)
  • ズーム重視タイプ(レンズ衝突はないがワイド端でケラレる)

でもそれって何なのでしょうか。レンズを付け替えられる一眼レフカメラならともかく、HX5Vは純粋なコンパクトデジカメ。実際、Seatoolの方はレンズポートは1種類ですし、ハウジング単体で使用する限り衝突もケラレも発生しないわけです。コンデジハウジングでもポートを分けることにメリットがあるのなら、それを丁寧に説明してくれないことには、単なる設計ミスに思えてしまいます。

内心、新規参入のACQUAPAZZAを応援したい思いもありますが、もう少し経験値を蓄積してもらう必要がありそうです。

HX5V用の水中ハウジング、現時点ではSeatoolを選ぶ方が無難でしょう。

ハウジングをちょっと改造

Seatool社HX5V用ハウジングのボディは透明の樹脂で作られています。安価なデジカメに合わせて安く作れる素材を選んだのでしょうが、カメラのストロボ光が外部に漏れてしまうためハレーションの原因になり兼ねません。そんなときに重宝するのがINONのクリアフォトシステム。カメラに装着するとストロボ光を赤外線に変更してくれ、一見光らないけど外部ストロボはきっちり働くという状態になります。

ただし、HX5Vは私にとっての最新機種、陸でも使いたいのでクリアフォトシステムのフィルムを頻繁に貼ったり剥がしたりはしたくありません。そこで、クリアフォトシステムをカメラではなくハウジングの内側に貼り付ける改造を施すことにしました。

ハウジングの改造イメージ

用意するものは以下の通り。

  • DIY店などで売っている5mm厚のウレタン素材。もしくはウェットスーツの切れ端でも可
  • 両面テープ

手順はこんな感じです。

  1. ウレタンをカメラのストロボを隠せる大きさに切り出す
  2. ウレタンの中央部をくりぬいて光の通り道を作る
  3. くりぬいた穴に被せるようにクリアフォトシステム(フィルム&保護シート)を貼り付ける
  4. ウレタンのフィルムを貼った面をカメラ側に向け、輪っか状にしたセロテープでカメラのストロボの上に仮止めする(下図)

    改造の仕組み図
  5. カメラをハウジングにセットして、ズームレバーが操作できることを確認する。問題があればウレタンを削ってサイズを調整
  6. ハウジングと外部ストロボを光ケーブルで接続し、写真を撮ってみる。このとき光が漏れたり外部ストロボが連動しないようなら、ウレタンの貼り付け位置やくりぬき穴のサイズを調整する
  7. カメラを取り出し、ウレタンのフィルムが貼ってない面に両面テープを貼って両面テープにウレタンの穴と同じ大きさの穴を空ける
  8. 両面テープのはく離紙を剥がして粘着面を露出し、カメラをハウジングにセット
  9. カメラを取り出す。その際、ウレタンがハウジング内に張り付いて残ればOK。仮止めのセロテープを捨てて完成
これでカメラをハウジングにセットするだけで、クリアフォトシステムが有効になります。

ハウジングの雑感

一つ前のエントリでSeatool社HX5V用ハウジングには少々癖があると書いたのですが、具体的には以下の通り。

  • Oリングの直径が2mmと細く、付属の極薄リムーバーでないと取り外しが困難
  • シャッターボタンがレバーではなく突起状なので、ちょっと指に食い込む感じ
  • 付属する光ケーブル用アダプタ(写真中央の丸いパーツ)の穴4個の内、2個はレンズポートに隠れて使い物にならない

Seatool社HX5V用ハウジングの光ケーブル用アダプタ

  • 遮光フードがない
  • ハウジングのモードダイヤルが空回りしがち

最初の二つは仕様として割りきれます。三番目も光ケーブルは分岐できるので容認しましょう。遮光フードも運用でカバーできます。でも五番目の件はさすがに見過ごせません。HX5Vには録画ボタンがあるので動画撮影のためにモードを切り替える必要はないのですが、パノラマ写真を撮りたい場合はダイヤルを回す必要があります。

なお、このハウジングのモードダイヤル機構はセットしたカメラのダイヤルを上から押さえつけるタイプです(下写真の白丸内)。

モードダイヤルの仕組み

埋め込まれたOリングとの摩擦でカメラ上面のダイヤルを回そうというコンセプトなのですが、Oリングは防水性、耐圧性には優れているものの摩擦のグリップ力は弱いため、ハウジングのダイヤルを回しても上滑りしがちです。ダイヤルを上から押さえつけてもさほど改善しません。

何となくですが、このダイヤル操作機構は、ハウジングを使い込むにつれ遊びが大きくなり、ますます効きにくくなっていきそうな気がします。きっとそのようなテストはしてないんだろうな…。

Seatoolは「最小の容積」を基本コンセプトとしているのでこのような構造を採用したのでしょうが、買う側、使う側にしてみれば、少々大きくなっても使い勝手の良い製品、安心して使い込める製品の方が好ましいものです。ここはオーソドックスに歯車の噛み合わせでダイヤルを回す仕組みを採用してもらいたかったと思います。

例のアダプタの件といい、モードダイヤルといい、同社にはもう少しユーザの視点に立って作って欲しいものです。何だったら私もテストモニタを買って出ますし。

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逆にこのハウジングの良い点は以下の通り。

  • アクセサリーシューが標準装備

Panasonic、FUJI FILM、Olympus社の純正ハウジングにはアクセサリーシューが常設されていますが、CanonやSonyの他機種向けハウジングにはありませんので。そのこと自体、それらのメーカーの怠慢、無気力、ユーザ無視だとしか思えないのですがね。