BAYSIDE English Cebuの過去と未来

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7月13日の夜、私のFacebookウォールに衝撃的な投稿が流れてきました。私も2015年に利用したことがあるフィリピンの英語学校BAYSIDE English Cebuがえらいことになっていて。いや、私が去った後にオーナーが代わるゴタゴタがあったとは聞いていたけど、まさかそんなことになっていようとは。顔なじみの先生たちも引き続き務めているのに…。

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かいつまんでいうと、佐々木綾子さんというシングルマザーが2012年にセブのマクタン島に開校したBAYSIDE English Cebuが、東進ハイスクールの元講師である山中博氏および彼に買収されたであろうBAYSIDEのスタッフ松井元輝氏、土原弘人氏らの違法行為によって騙し取られたというもの。しかも乗っ取りが不完全だとの自覚からか、彼らはその後も佐々木さん親子を執拗に脅迫したようです。当然、そんなことをすれば録音が取られて犯行の証拠になってしまうのだけど。

詳細は下記サイトに書かれています。どうしても感情が先走るためあまり読みやすくはないものの、それがかえってリアリティを醸し出しています。

リベンジ(再起)

「東進ハイスクールの元講師が詐欺や恐喝事件を起こした」ともなればそれなりのニュースバリューがあるので、いずれ文春や新潮などの誌面やテレビのワイドショーを賑わすことになるかもしれません。

そうして様々な困難の末、ようやく裁判が始まったことで事態がオープンとなり、部外者の私も知るところとなりました。ちなみに元職や現職のBAYSIDEの先生達に尋ねてみたけど、彼女らも最近まで全く事情を知らされていなかったようです。

で、早ければ来月にも結審公判が開始するようなことを聞くけど、フィリピンという国で事がそうスムーズに行くかは不明です。果たして日本人の我々が予期するような判決が出るのかも。でも、もし詐欺などで有罪となれば山中氏らは収監されるんでしょうかね、あの有名なセブ刑務所に。ほんでもって広場で揃いのオレンジの囚人服を着て見学者の前で踊ることになるのかな。スリラーとかフォーチューンクッキーとか恋ダンスを。

それと仮に山中氏らに有罪判決が出ても学校のコントロールが無事に佐々木さんの元に戻るかは解りません。そこは裁判の結果次第でしょうか。

ただし、佐々木さんが返り咲くにしても、権利が宙に浮いて第三者が引き継ぐにしても、この先の学校運営はなかなか難しいのではなかろうか。というのも英語の学校を取り巻く状況が大きく変わっていきそうだから。何しろ今では語学学校がセブだけでも70校以上、フィリピン全土では500校以上もあるようだし、早くも飽和状態だろうと。

いわゆる「フィリピン英語留学」は、つまるところ教育ビジネスではなく観光業の一形態。学校と言いつつもそこには入試も卒論もなければ在籍期間も人によってまちまちで、当然ながらその学校を経験しても就職に有利なんてことはありません。はっきり言ってしまえば「ジンベエザメと泳ぐ」「ビーチで遊ぶ」「マッサージを受ける」などの代わりに「英語の授業」があるツアー合宿なわけです。

よってスパルタ指導を売りにしている一部の学校にはそれが目的の気合いが入った人達が集まるかもしれないけど、その他の「初級者レベル・学び直し」の最大ボリューム層を狙う学校ではどうしても広告宣伝の勝負になりがちです。様々なメディアに広告を出し、留学支援エージェントに紹介してもらったり、旅行会社などとも提携すれば留学生という名の観光客を集められるけど、相応にコストがかかるし集客競争も次第に加熱していくという。

しかも近年ちょっとしたブームになり経験者が増えたことでフィリピン英語留学の限界、成果の出づらさも知られるようになってきました。あちこちのblogやWebサイトで書かれているように、事前に日本でみっちり準備してから臨んだ人なら相応の向上が見込めるものの、「留学」という言葉に帰国子女のイメージを重ねて「異国に身を置けば自身の英語スイッチが入ってそこそこ話せるようになるかも」と期待して行くような人(実際には大半がそうかも)は、どうにも成果がないまま「楽しかった」「英語への抵抗感がちょっと薄れた」「日常的なフレーズを少し覚えた」程度で帰国することになります。そりゃそうですよね。英語の基礎ができていない人が英語のルールを英語で教わってもチンプンカンプンなのは当然だから。使う教科書だって英語だし。そんな状態で何週間、何ヶ月滞在しようともお金と時間の無駄です。

加えて日本人経営の学校ではどうしても日本からの留学生が多くなるけど、それも英語力の向上を大いに妨げます。フィリピン英語留学が持つビジネス構造上のジレンマです。意図的に日本人との接触を避けたとしても食堂やラウンジなどで日本語が聞こえてくれば、せっかく英語モードになりかけていた耳や脳が日本語の世界に引き戻されてしまうという。かといって日本人同士が接触しない環境を作るのは困難だし、「学校内で日本語を話したら退学」なんてルールだと商売にならないでしょう。

そのためこの先は「英語力をある程度まで上げてからじゃないと英語留学は無意味」「日本人の多い学校では英語力はまず伸びない」「他国より安いフィリピン英語留学とてコスパが悪い」なんて認識が広がりかねず、最もボリュームのある層の足が遠のけば集客競争で苦労することになります。実際「フィリピン人を相手に英会話の訓練がしたい」といったニーズなら留学よりも圧倒的にお安いオンライン英会話サービスもあるわけだし。

早い話、フィリピンの語学学校のビジネスも乱立とプチブームの一段落によってそろそろ曲がり角に差し掛かり、淘汰の段階に突入する頃合いではないかと。どこが勝ってどこが負けるかは解らないけど、仮に留学希望者の総数が減らなくてもそれらを学校どうしで平和理に分け合うということにはならず、しっかりした商才、集客能力などの経営手腕がないところが勝ち残るのは厳しいのではなかろうか。

自動車のイラスト
英語留学は自動車学校の合宿にも似ているけど、最終的に運転免許を取らせてくれる自動車学校とは違って、英語留学のゴールは自分次第。地力を付けてから行かないと見返りもありません

まあ、フィリピンの英語学校は私のビジネスではないのでBAYSIDE English Cebuや同業者の先行きがどうなるかはともかく、とりあえず裁判では佐々木さんに有利な判決が出て事態が好転し、彼女ら親子の身の安全も得られることに期待します。

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