自己責任は高くつく

認知症の高齢者が起こした事故に対して家族は責任義務を負わないという最高裁判決が出ました。もっとも当案件における諸々の条件が考慮された結果だけど、考えさせられます。

先日、コナミスポーツの露天風呂でかつてのダイビング仲間と話している際に、介護費用負担の議論になりました。

私が「最近、新百合ヶ丘に新しい老人ホームが建ってた。でも東京圏にはもっと必要だ」と言うと、彼は「そういうのは自己責任で」という意見でした。そういや彼は「自身の資産を1円単位で把握している」と言って憚らない人物。自分に直接関係のない事象には鐚一文支払いたくないのでしょう。米国大統領選になぞらえれば私が民主党寄りで彼が共和党寄りの思想なのかな。

でも自己責任は短期的には確かに合理的だけど、回り回って結局は高くつくと思うのですよね。米国の例で言えば、長年「保険は自己責任」でやってきたけど、いざ中間層が切り崩されてしまうと「裕福でなければ、ちょっと病気をしたら破産」という社会となり、遂には国力を落とすに至りました。因果関係で言えば優勝劣敗の行き過ぎが先か保険の不備が先かは微妙なところだけど、ともかく自己責任万能では社会が不安定化します。お金に不自由しない富裕層とて社会不安が大きい国よりも安定した国に住みたいでしょうに。

老人ホームの件で言うと、例えば「施設に入れなかった認知症の老人が自身が運転する車の前に飛び出してきて、不可抗力的に轢いてしまった」なんてことは起こり得ます。自分の責任ではないにしても後味は悪いし、事後処理でも何かと負担は大きく避けたいところです。

また冒頭の最高裁判決で言えば、その場合でも認知症老人の家族は責任を負わないのだから、何かしらの損害賠償を求めようにも泣き寝入りを強いられるということにもなりましょう。でも、介護付き老人ホームが拡充され、認知症の高齢者が手厚くケアされていれば、そのような事故は未然に防げるかもしれません。

いや、介護施設不足を放置すれば、経済の活力が失われ、富裕層とてマイナス影響を受け兼ねません。実際、東京圏一都三県では昨年から2025年までに175万人(沖繩や鹿児島の総人口よりも多い!)の後期高齢者が増加し、13万人の介護難民が発生すると言われています。ならば介護離職者が10万人超、身よりがなく介護放置される高齢者も万単位で出兼ねないわけです。富裕層とてその資産が東京の活力に立脚するものならば価値は目減りしていきます。

というわけで、何でもかんでも社会任せにすればいいわけではないけど、自己責任論は行き過ぎればかえって負担を増やし兼ねないのだから、介護施設のように「公共性が高く、喫緊の拡充を要するもの」は優先的に税金を投入してしっかり作っていくべきだと思います。

オリンピックと消費税と

wordpress-logo2020年の東京オリンピックが決まって一週間。私の身の回りでは誰も話題にしていないけど、そんなものなのかな。

シリアの内戦問題がこんな時期でなければ順当にイスタンブールに決まっていたはず。「戦争様々」とは言いたくないけど、東京は棚ぼたを拾いましたね。それでも当確は当確です。

正直なところ私は招致に消極的でした。東日本大震災を受けての仮設住宅の入居率はいまだ9割だし、もっと優先的にやるべきこと、お金の使い方があると思うのですよね。今、オリンピックなんか呼んだら被災地なんて報道されなくなり、なかったことのようにされかねないもの。これが「東北オリンピック」なんてことなら私とて無条件に賛成したのですが。ああ、東北は都市名ではないか…。

また、消費税増税も予定通り来年4月からの実施に落ち着きそうな気配。私は慎重論支持で、まだ早いと考えていますが、こちらは昨年の総選挙で自民党が大勝したのだから当然の流れですね。

民主党のあまりのダメっぷりの反動で、反射的に自民党に入れた人も多かったと思うけど。その結果が何を意味するかなんて考えずに。

私が消費税増税が時期尚早だと考えるのは、かつて盛んに言われた「穴の空いたバケツ問題」が一向に解決していないから。今増税しても本来の目的である財政再建や社会保障の充実には結びつかないどころか、穴から漏れていく分まで余計に税負担を求められると思うので。

増税賛成派は「ここで増税しないと国債が売り浴びせられて、たいへんなことになる」などと金利を人質をとった脅しにかかっているし、もう増税という手段が目的化しちゃってますよね。「バケツの穴」についてどう考えているのか訊いてみたいものです。

しかもオリンピックの招致が決まってしまいました。もう最悪のコンビネーションかも。片方で税負担が増え、もう片方で巨額の税金がインフラ投資に使われてしまうという。しかも東京に一極集中で。造ったインフラにはメンテナンスの費用が継続的に必要なので、またバケツの穴を新たにこしらえるような話にもなりかねません。

また、単純に消費税増税が景気に水を差すのは確実でしょう。前回2%上がった1997年は、人々の所得がピークにあった頃だけど、今は平均所得は下がり、低所得者は増え、貧困層も増加しています。このまま来年3%、再来年さらに2%の消費税増税がなされれば、多くの人が消費を控えざるを得ないので、また景気低迷の悪循環に逆戻りしかねません。

増税はするけど景気対策に5兆円だなんて、何だよそれ。アクセルとブレーキを両方踏み込むって?

オリンピックの経済効果は3兆円、波及効果は一説では150兆円とも試算されていますが、それもどうでしょうね。人々がオリンピックのために余計にお金を使ってくれればいいけど、オリンピックのために他を切り詰めるなら収支は変わらないのだし。

てなわけで、7年後のオリンピック開催で景気が上向くなんて期待しない方がいいと思います。浮かれて過大に投資すると、とんでもなく跳ね返ってくるので、我々国民はメディアの力も借りて政治やオリンピック関連団体の動きを注意深く見ていかないといかんです。まあメディアもあまり信頼はできないのだけど。

野田政権は日本を壊そうとしている

消費税増税法案が衆議院を通過しました。これで本決まりではないけど、まったく腹立たしい限りです。まるで「消費税増税ができれば国が潰れても構わん」と言わんばかりなので。野党が賛成して与党の数十人が反対って何なんだよ…。

そもそも「消費税は上げない」というマニフェストで獲得した議席をたのんで消費税増税にまい進するってのは恥知らずのデタラメもいいところ。国民を愚弄しています。

私とて「長引く不況下で増税してくれるな」なんて言う気はありません。昨今、かなりの国民は「将来の消費税増税はやむなし。筋道さえきっちり示してもらえば賛成」と考えているわけで、だったら増税の必要性を説いて解散総選挙に臨むのが筋。ちゃんと理を説いてそれに説得力があれば選挙にだって負けないはず。でもそれをしないってことは、社会保障改革も行政改革も規制緩和も一切決めないまま消費税だけ上げたがっているということ。増税が手段ではなく目的になっているわけです。

これって東電が資産を差し出さずに賠償金を電気代に転嫁する話と同じで、お手盛り政治を続けるための掴み金を確保したということ。「増税分は社会保障に使う」と言いながらも社会保障が充実する保証はどこにもありません。

百歩譲って消費税増税を受け入れようにも、増税で経済なり財政状況を好転させる方策がなければ何ら得ることもなく、ただただ国民生活を疲弊させるだけに終わります。だいたい財政赤字垂れ流しの原因は消費税率が低いからではないわけです。闇雲に増税して10兆円ほど税収を増やしても焼け石に水。このままだと野田佳彦は「日本を破壊した男」として後世に名を残すことになるでしょう。

自由民主党との出来レースによる増税なだれ込みは、どうにもあのブラックジョークを彷彿させます。北朝鮮が崩壊したら無理やり開発した核兵器が手土産となって韓国が核保有国になるという。野田氏は民主党を立ち直れないほどに壊した上で消費税増税を手土産に自民党入りするんじゅやないかと…。

ショー・ヒ・ゼーの不思議

政治の話。今月末からの通常国会の争点の一つが消費税の増税議論。野田政権は「税と社会保障の一体改革」を掲げ、何としても増税にこぎ着けたいようですが、どうにも「増税に頼った社会保障のいったん改革」にしか見えません。財政危機と言いながら既得権は極力温存した上で帳簿の帳尻を取り繕うという魂胆が見え見えです。

残念に思うのは、一般的に有識者とされる人に賛成者がなんと多いことか。経済的に恵まれた立場の人は消費税の負担感が比較的小さいので、国の財政のテクニカルな面に目が生きがちなのでしょう。彼らはメディアで財政危機と増税の必要性を説けば仕事が増えますしね。

また、良く言われる「増税の前に自分たちが身を切れ」という論調も変な話だと思います。いや、もちろん議員定数の削減も公務員の給与引き下げもやってくれて良いのですが、それらは増税の前提条件としてはハードル低すぎですしょう。それで減らせるコストなんてたかが知れてます。

なお、私が見聞きした中でもっとも賛同するのは宮台真司さんの見解。「行政改革、産業構造の変革なしに増税したところで、お先真っ暗なだけ」というもの。

例えば、かつての事業仕分けの「2位じゃダメなんですか騒動」の時、ノーベル賞受賞者の小柴さんが「科学者には予算の1割しか下りてこない」と嘆いておられました。実に予算の9割が中抜き、ピンハネされていたわけです。仮にこれをゼロにできれば予算を半額にしても5倍の費用を科学者に渡せます。そんな例はそこらじゅうにわんさか眠っているはずです。いまだに続く天下りの因習(当然、多額の税金が注ぎ込まれている)や補助金ばらまき行政にメスを入れて切り落としてからでなければ増税による増収分も早晩食い尽くされ、経済にしろ財政にしろ負の連鎖でいっそう悪化するのは解りきっています。

聞くところでは、野田総理は自身の政治生命と引き換えに増税法案を通して朽ち果てる覚悟だとか。それが本当なら「死刑を覚悟に殺人を犯す人」みたいでタチが悪いよなぁ。かといって増税反対派とされる議員連中も信用できないし…。

パラオのパーミットの値上げが決まったそうで

昨年末、パラオのコロール市議会で法案が可決したパーミットの値上げですが、ふと気になって調べたところ、1月4日付けでおふれが出ていました。6月1日から施行だそうで。無難にハイシーズン後ですね。

ロックアイランド・パーミットが$25→$50。倍増ですが額にして2,000円かそこらのUP。現地のスーパーで買う缶ビール換算で8リットルぐらいと考えると何だかガッカリな気もしますが、燃油代の動向では消し飛んでしまう額です。それに6日間のダイビングツアーなら最終日のアクティビティも含めて1日あたり約1,000円。まだ許せるかと。

でも、もう一つのジェリーフィッシュレイク・パーミットは$35→$100。いきなり3倍だし、毎日クラゲを見に行く人なんていないだろうし、湖までの山の登り下りを入れても一時間かそこらに約8,000円は高いよなぁ。

なお、パラオからの帰国前日はアクティビティツアーに参加するのが一般的。「シュノーケリング&ミルキーウェイ&シーカヤック&ジェリーフィッシュレイク」のツアーなんかが人気ですが、ジェリーフィッシュレイク抜きのコースも選択も可能だったかと。どちらに申し込んでも同じボートで各地を回るので、希望者がジェリーフィッシュレイクに行っている間は近くのシュノーケリングポイントで時間をつぶすことになります。シュノーケリングが二回になりますが、私はこちらの方が好きでした。無数にいるミカンを剥いたような感じのタコクラゲは最初こそもの珍しいけど、すぐに飽きてくるし。