第2子以降の保育継続をさいたま地裁が却下した件に思う

wordpress-logo先日、埼玉県所沢市にて、第2子を出産した母親が育児休暇を取ったら保育園に預けている第1子を退園させられることになりました。母親らは退園の差し止めを求めたものの、さいたま地裁は却下したそうな。

まあ、法律に従えば当然ですよね。それによって待機児童が一人、保育の機会にありつけるのだし。でも、その背景にあるのは都市計画の破綻。市に保育の受け入れ余力さえあれば、このような事態にはならなかったのだから。

これを東京圏と地方の構図と重ねて見ると、さらに問題が浮き上がってきます。これまで東京圏は地方から労働力をかき集めることで繁栄してきました。おかげで地方は人口流出が続いています。かつて国内第二の大都市だった大阪ですらそう。東京圏の繁栄は地方の衰退と背中合わせなわけです。

ならば東京圏の各自治体は膨れ上がった人口規模に見合った社会サービスを提供するのが責務。日本創成会議の「高齢者の地方移住」という提言もそうだけど、待機児童やら医療・介護の不足が顕著になること自体、どうかしています。政治、行政のお粗末さの結果でしょう。

財源がないと言うかもしれないけど、そもそもそれが間違い。だったら住民税率を上げてでも必要なサービス水準を確保するべきです。東京は地価が高いのだから、そこで社会的なサービスを受けるための税負担も大きくなるのは必然でしょう。なのに住民税率は全国でほぼ10%に統一されています。横浜や川崎はそれよりも微妙に高いのですが。

逆に言えば、人口が圧倒的に少ない地方と住民税率が変わらないのだから、東京圏で保育やら医療・介護の受け入れ能力が足りないのは当然の結果。新たに施設を造ろうにも相応しい土地を見つけるのが難しかったり、金額が予算に見合わないことが多くなるので。

日本の社会は「低負担・高福祉」とも言われるけど、そんな虫の良い話がまかり通るわけがなくて、そのしわ寄せを子育て世代の家庭や医療・介護を必要とする高齢者に押し付けて綻びが見えづらくしているだけです。オフィスは歓迎だが、保育園や介護施設にお金は回さないとばかりに。

よって地方都市の住民税が10%なら、東京の外郭都市は12%、23区内なら15%といった感じのグラデーションがあって然るべきでしょう。そうして得た財源を元に社会サービスの拡充を目指す一方で、無謀な人口流入も抑止すると。都心の住民税が上がれば地方に本社を移転したり、あえて地方で起業する会社も増えて、次第に人口規模と社会サービスとのバランスがとれていきます。

東京都と隣接三県の人口はこの国の約3割。その内の都心部とその近隣都市で住民税率が上がればインパクトは大きいけど、負担が増える一方で待機児童問題が改善されれば母親も働きに出られるし、高齢者が医療・介護の機会を求めて知人もいない地方に移り住む必要はなくなります。よりよいサービスを得るためには甘受すべきコスト増ではないでしょうか。

ちなみに石原慎太郎元東京都知事は新たな財源確保策として近隣県から東京都内に通勤している人から税金を取る案を主張しています。なんでも東京都に住民税を払わないのに東京都内の社会サービスを享受しているからだと。でも、それはダメですね。だったら東京都が得ている法人税の内、近隣県からの通勤者が貢献した分を県にも分配しろという話になるから。でなければ都内の会社は都民しか雇ってはいけないことにしてもらわないと。

それに近年は非正規雇用や派遣労働などの低所得者も増えたため、このままなら東京圏はいずれ「家も貯金もない下流老人の掃きだめ」と化します。それもほんの20年後かそこらの近未来に。地方の疲弊を尻目に勝ち組だったはずの東京圏が大都会とスラムが混在する途上国の首都みたいに変貌しないとも限らないわけです。

その観点でも、今や東京圏の都市計画を真剣に考え直すべきギリギリのタイミングに来ていると思います。

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